YouTubeについて思うこと

梅田望夫さんがYouTubeについて言及している。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060702/p1

さて、YouTubeを巡って思うのは、将来こうしたビデオ視聴のスタイルが定着してきたときに、我々は手元に、録画したビデオやDVDのライブラリーを持とうと思うだろうか、ということである。

僕の世代は間違いなく「こちら側」に「溜め込む」世代だ。情報と出合ったらそれを手元に残す(本屋で面白い本を見つけたらその本を買い、大切な記事はコピーし、テレビで「また見たいかも」と思うような何かが放送されたら録画し・・・)というのが習い性になっている人が多い。でも「溜め込む」ことは「溜め込む」のだけれど、「溜め込んだもの」の何パーセントに再びアクセスしたかとなると心もとない。「溜め込む」こと自身で安心してしまう、という要素も大きかったと思う。「出合った情報」は、そのときに溜め込んでおかないと、二度と出合えなくなる、という強迫観念があったからではないかと思う。

これからは、「あちら側」に無限の情報が存在し、その検索性が高まり、なおかつネット上で人でつながっているので必要なら「誰かに情報を求める」というアクションも簡単に取ることができる時代である。欲しい情報のすべてが絶対に「あちら側」に存在するという保証はないが、かなりの確度で必要なときにアクセスできる(exactに欲しいものにたどりつけなくても似たような未知のものには必ずたどりつける)、と信じることができるようになると、人々の情報に対する行動は変わってくるに違いない。

時代の違いが大きいのだと思う。

僕は今40歳で、梅田氏と若い世代の間くらいの世代である。
Amazonで本を買うのには抵抗が無い。CDは買うくせに、ほとんどiPodで聞いている。にも関わらず、iTMSで曲を買うのには抵抗がある。HDDレコーダーに録画するくせに、1度見ては消してしまう番組も多いし、視聴しきれずに溜まっている番組も多い。「こちら側に溜め込む」くせに、消費スタイルは若い人に近い微妙な世代なのかも知れない。


少し違った視点でYouTubeの将来についても考えてみたい。
動画というジャンルを考える際に重要なのはキラーコンテンツだと思う。
その昔オーランドでVOD実験が行われていた頃は、一般に映画がキラーコンテンツだと思われていた。しかし、それは単にレンタルビデオが便利になるだけで本質的な変化ではない。ビデオ化されなかったり、されても近所のレンタルショップに並ばないような映画であれば、ロングテール的な意味で変革かも知れないが。
当時、僕が想定していたキラーコンテンツは過去1週間分のTV番組である。需要は映画よりも、見逃した(録画しそこねた)TV番組にあると思ったからである。例えば会社で「昨日のWBSに梅田さんが出演してたね」なんて言われても、それを見る手段が無い。1週間分さかのぼって番組をVODで観ることができれば、その方が需要があると思ったのである。TVCMを飛ばせないようにすれば、HDDレコーダーでCMスキップして見られるより、スポンサーサイドからすればありがたい話でもある。
#HDDやTVチューナーがこのまま安価になってくれば、VAIO type-Xのように「こちら側」に1週間分撮りためておけるような時代になったが、情報家電として一般的に普及するにはまだ時間がかかるだろう。
それがまさに
http://d.hatena.ne.jp/muranaga/20060616/p1
で村永氏が梅田氏の話として書かれている

20代半ばで、見逃した TV 番組を YouTube で検索して見る人がいるとのこと。そういう人はレコーダを使わない。情報を「所有しない」で「消費する」。ストックではなくフローで扱う。そういう人が増えてきているというのである。

という使い方である。


それ以外に、YouTubeにマッチする動画のジャンルは何があるだろうか。1つは昔のお宝映像だと思う。著作権の問題は残るが、僕の世代のJ-POPファンであれば、YouTubeの「メリークリスマスショウ」での検索結果には興奮すると思う。音楽やコントといった短時間のコンテンツとは相性は良さそうである。ただ、blogのいわゆる素人の文章と同様に素人の動画がキラーになるかと言えば疑問が残る。新聞記事とblogの文章との差と、プロが作成した映像と素人映像の差は非常に大きいからである。そして、プロが作成した映像となると著作権の問題がどうしても出てきてしまうのである。そこをYouTubeがどうクリアするか興味深い問題である。


YouTubeをプロモーションに使うということは出てくるかも知れない。今は録画したTVの音楽番組のPVを素人がアップしている状態だが、音楽PVをレコード会社が、若手芸人が(知名度を上げるために)コントをYouTubeに自らアップするなんてことも出てくるかも知れない。
ただ、ライトユーザはCDを購買せずにそれで満足してしまうかも知れないから、実際には1番だけとか、期間限定とかなんて事になるかも知れないが。