BOOM TOWN/内田美奈子

内田美奈子のマンガに初めて出会ったのは確か「百万人の数学変格活用」だったと思う。当時、朝日ソノラマのサンコミックスには秀逸な作品が多く、「NORA/御厨さと美」「たいした問題じゃない/速星七生」「地球の午后三時/さべあのま」や高橋葉介の一連の作品など結構読んだものである。
いきなり話がそれてしまった。BOOM TOWNについて書くんだった。初出は1992年冬のコミックガンマ。かなり古いマンガである。ネットワークゲーム世界BOOM TOWNのデバッガーである武部朱留を中心に、ハッカーや人格を持ち自分をNPCと認識しつつ悩んだりするXYZ-Pと呼ばれる住人たちが織りなす物語。現在のゲームで言えばSimPeopleに近いかも知れない。キーボードやマウスではなく、感覚変換によりその世界に入り込む設定はMATRIXにも類似している。
1992年と言えば、Ultima Onlineアルファテストの4年も前だ。もちろん、それ以前にも仮想現実での疑似体験という設定はSFなどでも取り上げられていたと思う。だが、UOの4年も前にそれを一般人も遊ぶという設定で、なおかつ設定に溺れることなくエンタテインメントに仕上げているところに彼女の非凡さを感じるのである。
彼女のマンガは、読者に世界観を理解させるための説明的なシーンやセリフが少ないため、1回読んだだけではなかなか分かりにくいことがある。このマンガも決して分かり易い設定ではないが、彼女にしては説明が多く楽しみやすくなっている。
今にして思えば、ネットワークゲームを始めたきっかけはこのマンガにあったのかも知れない。

内田美奈子さんのページ「あおあしかつをどり工房」:http://www.jlpowder.com/aoashi/index.html
nekoさんの内田美奈子作品リスト:http://www.nemesys.co.jp/neko/minako1.html
第六企画さんの内田美奈子解説:http://www.nets.ne.jp/~hahihin/comics/uminako.html