ぎゅわんぶらあ自己中心派/片山まさゆき

メジャーなマンガですが、大分以前の作品で知らない人も居ると思いますので、取り上げてみます。最近コンビニ本にもなり、改めて読み返してみたのですが、題材を麻雀ギャグに昇華するセンスは現在でも充分に通用します。「ふぞろいの林檎たち」や「神田正輝松田聖子の結婚」などさすがに題材の古さは隠せませんが、それでも面白さの方が優る作品です。

また、麻雀漫画が麻雀専門誌ではなく一般漫画誌ヤングマガジン)に連載されたということは、麻雀漫画界にとって非常にエポックメイキングな事件でした。80年代後半は、麻雀漫画が大きく変革を迎えた時代と言っていいでしょう。それまで麻雀漫画と言えば、主要読者は中高年でいわゆるエロ劇画とあまりかわらないものでした。そのような中、能條純一の「哭きの竜」や峰岸信明の「あぶれもん」、かわぐちかいじの「プロ」「はっぽうやぶれ」など若者にも人気となる作品が多く輩出されたのが、80年代後半です。ただ、これらの作品もまだヤクザに代表される劇画の世界を引きずっていました。一方で、てらおかみちおの「ポッキンルージュ」や日高トモキチの「パラダイス・ロスト」(これは90年代前半ですが)など劇画調でないポップな作品も誕生し始めました。その後、90年代前半は、入江紀子などの少女漫画家が連載したり、福本伸行が才能を開花させるなど麻雀漫画界の改革は進んできました。しかし、それらは麻雀漫画誌の中での出来事です。能條純一かわぐちかいじ福本伸行は、今や一般紙でメジャーな地位を確立していますが、それは麻雀漫画でではありません(福本氏はギャンブルマンガですが)。片山まさゆき氏が、麻雀漫画を一般漫画誌で長期連載し成功させたといいうのは、やはり大きな事件だったのです。

ぎゅわんぶらあ自己中心派 5(必殺!!麻雀人編) (プラチナコミックス) ISBN:4063532844

日高トモキチ公式ウェブサイト「も吉の物置部屋」
http://www.mokichi.net/