僕に踏まれた町と僕が踏まれた町/中島らも

どうやら人は自分に無いものに憧れるようで、小心者の私などは中島らも氏の豪快な生き方に強く惹かれます。氏の小説やエッセイも彼自身の生き方や価値観が下敷きのように透けて見え、そこが魅力の1つとなっています。「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」は小説ではなく、氏の学生時代を中心とした自叙伝的なエッセイです。「中島らも」という生き方を形成する源流を垣間見ることができ、読み物としても面白く、彼の作品の中で最も好きな本の1つです。「『今夜、すべてのバーで』以外は読んだことないんだよね」なんて方にお薦めの1冊です。
2004年7月26日、彼は何の前触れもなく亡くなりました。突然の訃報に驚く一方で、「酔って階段から転落し、頭を打っての死」との経緯を聞き、不謹慎ながら「彼らしい死に方だな」とちょっと「にやっ」としてしまいました。公式ホームページで、故中島らも夫人(中島美代子さん)が短くも素敵なメッセージを記しています。「そして多分「ふっふっふっー」と喜んでいると思うのです。とても自分らしいお別れができたから。」。自分らしい最後に満足してこの世を去ったであろう中島らも氏のご冥福を祈ります。

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫) ISBN:4087486397
中島らも 公式ホームページ http://www.age.ne.jp/x/ramo/
作家の中島らもさんが死去 http://www.asahi.com/obituaries/update/0727/002.html